現在、中国では、日本向けの「医療ツアー」が大人気を博しております。例えば、2016年に公表された“中国高浄値人群跨境医療健康白皮書”によりますと、中国家庭収入100万元以上の富裕層が最も興味を持っている話題は、「①金融投資」はもちろんですが、続いて「②健康養生」、そして「③旅行と休暇」の順でした。「健康養生」は、中国富裕層にとって重要な項目であり、最先端の医療サービスとその実体験を希望しています。しかし、中国国内では、優良な医療機関が少なく、先端技術も新薬も得られない場合が今でもあります。このため、彼らの視線は、高度な医療を提供する日本の医療機関に注がれることになります。
無論、それらの需要を取り込むべく、海外医療ツーリズムのコーディネート会社は、すでにたくさん存在しています。しかし、どちらかといえば、オーソドックスな「医療ツアー」ではなく、アンチエイジングや美容整形など「本格的な医療からは距離のあるツアー」が大宗を占めていることもあって、「始めの説明と違う」とか「効果がなかった」などというトラブルが多数発生しています。私は、そこにチャンスを見出しました。見栄えが良く、粗利が高い「アンチエイジング」や「美容整形」ではなく、効果が明確に見込める地に足の着いた「人間ドック」や「精密検査」という医療サービスを、スイス並みに快適に提供できるならば、後発ではありますが、勝機が十分にあると見込んだのです。
ちなみに、2015年における中国での「医療ツーリズム」の市場規模は、89億元(日本円換算で約1200億円)と言われており、毎年+50%前後の成長が見込まれているため、2020年には581億元(日本円換算で約7500億円)に達するといわれています。そして、現時点において、中国人富裕層の「海外医療ツアー」で人気の国は、①スイス、②韓国、③シンガポール、④日本、⑤台湾の順になっています。
しかし、日本の場合、派手ではなく、地道ではありますが、「人間ドック」や「精密検査」の評価が高いため、アンチエイジングで知られる①スイスや、美容整形の比率が高い②韓国よりも、「実際の価値」が高いのが実態です。また、癌治療が中心の③シンガポールは価格が高い割に対応可能な範囲が狭く、汎用性があり割安感のある④日本は、これらの国を追い抜くポテンシャルがあると、私は睨んでいます。
特に、「メイドインジャパン」の医療設備は世界的な評価を受けていますし、日本における医療機器の操作技術の習熟度が高いことで知られています。それを全診療科の医師が身に付けていることが高評価につながっており、それらが、結果的に、「日本人の平均寿命世界一を支えている」とみられています。さらに加えて、単なる医療技術にとどまらず、濃厚で優良なサービスを受けられるという点が、他国では見られない美点です。用意周到さやきめ細やかさは、中国人富裕層の評価を高いものにしています。
このため、各種の調査では、2020年には「医療目的の訪日中国人は31万人に膨らむ」「外国人全体では43万人の需要がある」と予想されています。ただし、正式に「医療ビザ」を取得して徹底的に治癒するというよりは、「観光ビザ」で、1日の人間ドックと周遊を楽しむというのが、現在の主流です。これに対して、私は、1週間の精密検査を主軸に据えた上で、大阪を中心とする「医療ツアー」を企画したいと考えています。